2階建て新幹線はなぜ今年で全廃されるのか

2022年4月1日

鉄道研究部 2021年度夏部誌

動機

日本で最後の2階建て新幹線E4系Maxが今年で上越新幹線での定期運行を終了することになった。そこで、なぜ定員が多いはずの2階建て新幹線は廃止されることになってしまったのか、疑問を持った。

仮説

A.　2階建て新幹線は重量があるため加速が遅く、新幹線全体の高速化の足を引っ張っているからと考えた。

B.　2019年にデビューしたE7系に置き換えるためと考えた。

C.　現在のE4系Maxは8両で運用されることが多いため、定員数がより多い12両のE7系のほうが連結の手間がなく、時間短縮に繋がっていると考えた。

検証方法

①実際に2階建て新幹線のE4系と、新型の1階建てのE7系に乗り、比較する

比較項目

1-揺れ　2-景色　3-椅子の居心地の良さ　4-新幹線独特のにおい　5-両数　

6-デビュー日　7-定期運用終了日　8-最高時速　9-定員数

②上越新幹線の乗降客数を調べる

検証

①E4系MaxとE7系の比較

	E4系Max（2階席）	E7系
1揺れ	多い	少ない
2景色	よい	高架線の柵の影響で少し見えにくい
3椅子の居心地の良さ	ふかふかだがリクライニング機能がない	比較的硬いが、上下に移動できるすごいふかふかのヘッドレストがついている
4新幹線独特のにおい	強い	においはするが弱い
5両数	通常は8両、連結している場合は16両	12両
6デビュー日	1997年12月20日	2019年3月16日
7定期運用終了日	2021年10月1日
8最高時速	240㎞/h	260㎞/h
9定員数	通常は817名、連結している場合は1634名	924名

②上越新幹線の乗降客数

2階建て新幹線は着席率の向上のために製造された。そのため、E4系Maxの引退には上越新幹線の乗降客数が関係しているのではないかと思った。ここでは、大宮～新潟、大宮～高崎、高崎～越後湯沢、越後湯沢～新潟の1987年から2017年までの5年ごとの乗降客数をまとめた。

	大宮～新潟	大宮～高崎	高崎～越後湯沢	越後湯沢～新潟
1987年	28876	44430	35364	23498
1992年	39777	61778	41488	26379
1997年	39705	74174	37281	22284
2002年	42063	85190	35949	22023
2007年	43305	90505	36831	21658
2012年	41255	86256	35572	20274
2017年	45347	106539	30179	22020

これを見ると、大宮～新潟の乗降客数は少しずつ増えているが、それは大宮～高崎間が北陸新幹線の影響で増えているだけであって、新潟までを結んでいる高崎～越後湯沢間は右肩下がり、越後湯沢～新潟間はほぼ横ばいとなっていることがわかる。

考察

A.　実際、最高速度はE4系Maxのほうが劣っているため、高速化の足を引っ張っていたのは事実だと感じた。

B.　上越新幹線の乗降客数は増えておらず、今は着席率の向上が求められているわけではないため、正しい仮説だと感じた。

C.　連結を無くすことで人員の削減も可能なため、人手不足の現代社会には適している。しかし、連結により鉄道ファンを集めることができるとも感じたため、これはわからなかった。

補足

もともとE4系Maxは2020年に引退予定だったが、運用終了日が延期された。なぜかというと、台風19号の影響で北陸新幹線に使用されていたE7系とW7系、計10編成が千曲川の氾濫により浸水被害を受けてしまったため、上越新幹線に投入済み、または投入予定のE7系を北陸新幹線に転用することとなり、その車両不足を補うことになったからだ。廃車となったJR東日本の北陸新幹線車両だけの損失額は約660億円と考えられる。